ホロン的調和と未病:生命の智慧から、健康と生き方を捉え直す(導入編)

健康を「状態」ではなく「流れ」として見る
はじめに
私たちはふだん、健康を「状態」として考えています。
元気か、疲れているか。
異常があるか、ないか。
検査値が正常か、異常か。
この見方では、健康とは
「良い状態にあること」
になります。
しかし、日常の実感は少し違うのではないでしょうか。
同じように疲れていても、
- 一晩眠れば回復する人
- 休んでもなかなか戻らない人
がいます。
ここで本当に大切なのは、「疲れている」という状態そのものではありません。
回復できるかどうかです。
若い頃は、無理をしてもすぐ元気に戻った。
最近は、少しの負担でも長く引きずる。
これは健康状態が突然悪くなったというより、
回復する余裕が少しずつ減ってきたという変化です。
健康とは、揺らぎの中で保たれるもの
体も心も、いつも同じ状態にあるわけではありません。
調子のよい日もあれば、
疲れる日もあり、
気分が落ちる日もあります。
揺らぎは異常ではなく、生命の自然な姿です。
大切なのは、揺れないことではありません。
揺れても、元に戻れること。
健康とは、静止した安定ではなく、
揺らぎの中で回復し続けられる力が働いていること
だと考えられます。
未病とは何か
病気と診断される前の段階で、
- 回復が遅い
- 疲れが抜けにくい
- 無理がきかない
- 余裕がなくなっている
といった変化が現れます。
未病とは、病気の手前の「状態」ではありません。
それは、
回復する力の余裕が減り、調整の流れが弱くなっている状態
です。
健康・未病・病気は、別々の区切られた状態ではなく、
回復力の余裕が少しずつ変化していく、連続した流れの中にあります。
この連載の構成と読み方
この連載では、健康・未病・病気を
「状態」ではなく「流れ」として捉え直していきます。
構成は大きく三つの段階に分かれています。
第1段階|未病とは何か
健康と病気を分けるのではなく、連続した流れとして見る視点を提示します。
第2段階|ホロンという視点
細胞・個体・社会という階層の中で、調和がどのように保たれているかを考えます。
第3段階|未病を学ぶということ
この視点を、私たちの生き方や医療のあり方にどう活かすかを探ります。
大切なのは、すべてを理論として理解することではありません。
読み進めながら、
- 健康を「状態」として見ていなかったか
- 不調を「排除すべきもの」として扱っていなかったか
と、自分の見方を少しだけ振り返ってみてください。
この連載は、答えを提示するものではなく、
見る視点を少しずらすための試みです。
健康とは、良い状態を保つことではありません。
未病とは、病気の手前ではありません。
それは、
調和を保とうとする生命の働きそのものを、流れとして見ること。
その視点から、これからの議論を始めていきます。
「ホロン的調和と未病」は、以下の3部(全8回)で構成されています。
【第1部:未病を問い直す】
第1回|未病とは何か? ― 病気の手前ではなく、「調和の揺らぎ」としての未病
第2回|ホロンという視点 ― 私たちは「全体であり、部分でもある」存在
【第2部:生命はどう調和しているのか】
第3回|細胞レベルのホロン的調和 ― 健康な細胞は、どうやって全体と協調しているのか
第4回|個体レベルのホロン的調和 ― 自分らしさと社会適応は、両立できる
第5回|社会レベルの未病 ― 社会もまた、ひとつの生命システムである
【第3部:調和の中で生きる】
第6回|調和させるのではなく、調和の中で生きる ― 無為自然・禅・縄文的在り方との接続
第7回|ホロン的調和としての健康 ― 健康とは、コントロールではなく統合である
第8回|未病を学ぶということ ― 生命の調和を観察し、育てるという知性


