2026年 新年のことば

私が残りの人生をどう生きるか ─ あなたへの手紙

新しい年を迎えるたびに、私は自分に問いかけます。

「残された時間を、何に使うべきか」と。

今年、私は66歳になります。医師として、教育者として、そして一人の人間として歩んできた道を振り返り、そしてこれから歩む道を見つめる時、一つの答えが明確に浮かび上がってきました。

それを、あなたと共有したいと思います。

なぜ、今このことを書くのか

私はこれまで、多くの患者さんと出会い、多くの受講生と学び、そして多くの問いと向き合ってきました。

その中で、一つの確信が深まってきました。

生命には、原理・原則がある。
その原理に即して生きることが、健康と幸せにつながる。
しかし、現代社会は、その原理から大きく逸脱している。

この確信を、私は個人の中に留めておくべきではない。思索として深め、言葉として遺し、次世代へ継承していく責任がある—そう感じたのです。

三つの道を歩む決意

だからこそ、私は残りの人生を、三つの道に捧げることを決意しました。

一つ目は、内省による深い思索と執筆です。

「心身一如の生命学」というブログ連載を通じて、私は人間存在の三つのモード、文明化と近代化による分断、そして生命の智慧による回復への道を描きました。

次は「陰陽調和の生命学」、そしてさらにその先へ。

生命とは何か、健康とは何か、幸せとは何か—これらの根本的な問いに向き合い続けます。

静かな朝の時間、ペンを持つ手を通じて流れる思索の時間。これは私にとって、最も深い喜びの時間です。

二つ目は、弟子の育成と弟子との対話です。

すでに70名を超える専門家の皆さんと共に学んできました。年間50回の講座を通じて、対話を重ねてきました。

しかし、これは単なる知識の伝達ではありませんでした。

皆さんからの問いが、私の思索を深めてくれました。
皆さんの実践が、理論を検証してくれました。
皆さんとの対話が、新たな洞察の扉を開いてくれました。

孔子は弟子三千と共に学びました。私もまた、共に学ぶ人々との対話の中で、思想を深めていきたいのです。

三つ目は、漢方治療と養生支援の実践です。

診察室で、一人ひとりの患者さんと向き合う時間。

その人の身体の声に耳を傾け、その人の人生の物語を聴き、その人に最適な治療と養生を共に考える。

この実践こそが、すべての源泉です。

理論は実践から生まれ、実践によって検証されます。思想は、具体的な一人ひとりの人生の中で息づいてこそ、意味を持つのです。

あなたへのメッセージ

この手紙を読んでくださっているあなたへ。

私が伝えたいことは、一つです。

あなたの中には、既に生命の智慧が宿っている。

38億年の進化が培った、健康に生きるための智慧が。
宇宙とつながり、意味を見出す力が。
社会の中で調和しながら、自分らしく生きる道が。

問題は、その智慧を「獲得すること」ではありません。
問題は、その智慧を「開花させること」なのです。

私の思索は、その開花への道を照らす灯りでありたい。
私の対話は、共に歩む仲間との絆でありたい。
私の実践は、具体的な一歩を示す手本でありたい。

残りの人生を、希望の種を蒔くために

現代は過酷な時代です。

しかし、生命の歴史が教えてくれるように、過酷な環境は新たな進化の触媒となります。

今、私たちが経験している分断、喪失、葛藤は、新たな統合、より高次の調和への「産みの苦しみ」なのかもしれません。

私は残りの人生を、この過酷な時代に生きる人々へ、希望という種を蒔くために使いたい。

その種は、思索という言葉として。
その種は、対話という響き合いとして。
その種は、実践という生きた証として。

いつか、私がこの世を去った後も、その種から芽が出て、花が咲き、また新しい種が生まれていく—そんな循環を夢見ています。

最後に

この三つの道を歩むことが、私の残りの人生の使命であり、喜びです。

あなたも、どうか共に歩んでください。

思索を深める旅に。
対話を重ねる学びに。
実践を通じた成長に。

2026年という新しい年の始まりに、私はこの決意を新たにします。

そして、あなたの人生もまた、生命の智慧が開花する美しい旅でありますように。

2026年 元旦
一般社団法人 漢方未病教育振興協会 理事長
辻仲病院柏の葉 漢方未病治療センター長
喜多 敏明


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2026年 新年のことば” に対して1件のコメントがあります。

  1. 石塚 勝巳 より:

    昨年10月から入院生活が続き、漢方未病養生塾には参加できず、残念です。この春には退院し、また参加したいと考えています。よろしくお願いします。
    先生の3つの目標を読ませていただき、思ったことは次のようなことです。
    生命の進化の中で、動物、植物、微生物に共通なものはDNAを構成する塩基がたった4種のA,T,G,Cから成り立っていて、その事実が生命は皆、繋がっているといことを教えてくれます。そのような中で、次世代によりよいものを伝えていきたいというのは、全ての生き物の本能のようにおもいます。個人の命には限界がありますが、生物の一員として、個の保存よりも種の保存が最後は優先することによって、生命の進化が維持されていくのだろうとおもいます。従って次世代のことを考えて行動する喜多先生の考え方には
    本能にも沿っていて、多いに賛同します。

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